「変わったこと? いや、別に。ああ、ただそういえば、万が一新型が使えなかったら困るから、従来のモニターも一台貸しておいてくれって言われたから倉庫から別のモニターを貸し出したわ」
「そのモニターはどこに?」
「さあ、中村さんの病室に持っていったと思っていたけど」
「いえ、四〇三号室には無かったです。新型のモニターしか置いてなかった」
一夏が驚いて口を挟んだ。
「ええっ、変ね。でも翌朝には倉庫に戻してあったわよ」
海智は新型モニターの取扱説明書をネットで検索してしばらく読んでいたが、突然目を大きく見開いて顔を上げた。
「一夏、これで第一の密室殺人のトリックが解けたよ。次は薬剤部だ」
そう言うと、海智はナースステーションを離れてエレベーターへ向かった。一夏は戸惑っていたが、呆れ顔の小林に「すみません」とぺこりと会釈するとそそくさと海智の後を追った。
「えっ、事件はもう解決したんじゃないんですか。まだ何か問題あるんですか?」
温厚な芳谷も二人のしつこさにはさすがに呆れた様子であった。
「前回は、生理食塩液と抗生剤を調整した後は石破さん以外誰もここに来なかったと伺いましたが、その前はどうですか。誰も来ませんでしたか?」
次回更新は7月27日(日)、11時の予定です。