【前回記事を読む】「“アート”は分からない、美術館はハードルが高い」…それっておかしい!「これでいいや」と選んだ100均のコップも実は…

第1章 アートと保育を考える

「美」の意識の磨き方

〝色やカタチ、素材〟についての理解と自分自身の個性の理解ができていれば、それなりの工夫でいくらでも楽しめると思うからです。大人も子供も便利で簡単なことに慣れすぎていませんか? 

現代はパソコンが生活に入り込んでいます。鉛筆やシャープペンシルで字を書くことが本当に少なくなってしまいました。パソコンは、すぐに修正できるし、本当に便利です。調べものも、検索すれば、すぐに答えが出てきます。本当に便利な世の中です。

ワークショップなどで大学生に詩の中の熊をイラストで描くように指示すると、インターネット検索で熊を探しはじめます。それを見ながらイラストを描きはじめる学生が沢山いました。自分で熊の絵を考えるのは心細いと考えるからでしょう。

検索を元にきっかけをつかみ、自分でイメージを広げることに頭を使ってほしいと思います。インターネットに丸投げしてしまうのは、感心しません。自分で熊のイメージを作る工夫が必要です。

キャラクターやゲームが氾濫した子育てど真ん中の若い方に、もっと深く、もっとゆっくり、本物に触れて、過ごす環境を教えてあげたくなります。親子でゲームの世界にはまっている家庭の話もよく聞きます。時代の方向性の違いなのでしょうか? しかし、もう一つ、本物に触れる機会が必要なように思います。その機会をどのように作ってあげればいいのでしょうか?

きっとその〝本物のアート〟に触れたひと時を心地よく思えれば、二つの世界(バーチャルと本物と思う世界)を楽しむことができると思います。

近所のお宅から、家を整理する時期に入っているお宅から遊休品を保育園に沢山いただきます。結婚式の引き出物の有名な陶器や絹の着物や、木からくりぬいた菓子器など、高価な品々が沢山あります。

これらの本物性を見抜く力がある人は実は少ないのです。見て触って持って、感じることを子供たちに体験させてあげることが大切だと感じます。バーチャルの世界と本物の作品と両方が必要です。普段から、沢山の自然の中の本物に触れてその味わいを体に覚えさせていく積み重ねです。