「経子さんはおそらく梨杏が二人を殺したのを知って、それを庇うために高橋と桃加を殺して全ての罪を一人で背負って死んだんだ」
「でも、梨杏自身が死んでしまったら何にもならないじゃない」
そう言うと、彼女は泣きじゃくった。
「私があの時梨杏を助けていれば・・・・・・ごめんなさい、本当にごめんなさい」
海智は咽び泣く彼女の姿をいたわしく見ていたが、次第に身につまされる思いに囚われた。一夏は自分の「罪」を全て彼に告白し、梨杏や経子の死に責任を感じている。
それに引き換え、彼は梨杏との関係を隠してまるで第三者のように装ってきた。弱くて狡い部分を彼女に見られたくなかったのだ。彼はとことん自分が情けなくなった。
「悪いのは君だけじゃない」
海智は一夏に、梨杏が山本公園で彼に告白しようとしたことを話した。
「そんなに好きでいてくれた人が虐められても俺は何にもしてあげられなかった。俺も同罪だ」
海智は拳を握り締め、目を固く閉じ唇を噛んだ。
「違うわよ」
「へっ?」
急に平静に戻った一夏の言葉に海智は驚いた。
「梨杏はあなたのことなんか好きじゃなかった」
「えっ、でもあの時・・・・・・」
一夏が急に顔を赤らめた。
「あの頃、二人でお互い好きな人を言い合おうってことになったの。それでお互いの恋を応援しようって。最初はそれぞれ好きな人に自分で告白しようってことになったんだけど、梨杏はどうしても勇気が出ないって。だから、お互いの好きな人に『私の友達があなたのこと好きなんだって』って言って様子を探ろうってことになったのよ」