ちなみに、先ほど洋の西側の理想像として登場した、アルブレヒト・デューラが作製した銅版画「アダムとイブ」に見られるアダムとイブの縦横比はおよそ四・五であり、東洋代表の百済観音のアスペクト比はおよそ六・〇である。
そこで、アスペクト比が四ぐらいの値が「細くて長い形」と感じる入口であるように考えられる。私たちは、アスペクト比が四~一〇の対象物は、安定感のある「細くて長い形」をしたものと感じているようだ。
私たちが、日頃使っている用具の中で「細くて長い形」をしたものは多い。例えば、鉛筆・箸・爪楊枝などがある。
これらのアスペクト比は二〇~三〇の間の数値である。中空管のフルートや尺八もこの範疇である。街頭で見られる電柱のアスペクト比は三〇~四〇の間の数値である。
さらに、お馴染みのミミズやヘビなどの動物の「細くて長い形」の代表選手もこの範疇に入る。これら一〇~五〇の間のアスペクト比の「細くて長い形」からは、安定感の中に機能性を感じるようになる。
歩行やスポーツの分野でお目にかかる「細くて長い形」としては、杖・ゴルフシャフト・釣り竿などがあるが、これらのアスペクト比は五〇~一〇〇の間の数値である。
運動性能を高めるために、より細くして作られているのであるが、私たちは、機能性のある形状として感じるようだ。これまでのことをまとめると、次のようになる。
アスペクト比が四~一〇の形、安定感を感じる「細くて長い形」
アスペクト比が一〇~五〇の形、機能性と安定感を感じる「細くて長い形」
アスペクト比が五〇~一〇〇の形、機能性を感じる「細くて長い形」