細くて長い形の文化 ―それは人類の直立二足歩行から始まった―

「皆様、はじめまして。私は〝細くて長い形〟です」

突然の自己紹介でびっくりされたかもしれませんが、「細くて長い形」をした仲間は思いのほかに沢山います。まずは、貴方の身の回りを見渡してください。

貴方が家の中にいるのならば、柱や天井の梁を細長い形と認識されるでしょうし、食卓の上にある箸や爪楊枝も同じように感じられます。勉強机の上に載っている鉛筆や物差し、電話の配線などもしかりです。

さらに、ノートに書かれている平仮名も細くて長い線の集まりです。庭に目をやると、樹木の幹や枝、草や蔓、蜘蛛の巣の糸など細長い形が目に飛び込んできます。

屋外では、電柱や電線や、いつも通る散歩道そのものもまたしかりです。これらの対象物は、大きさが違うし素材も違うけれども、何故すべて細長く感じるのでしょうか。その答えは対象物すべてに共通していることがあるからです。

それは、対象物の縦の長さに比べて、横の長さまたは断面積が著しく小さいことです。人類の脳は、そのような対象物を「細くて長い形」と認識します。そして、人類は、私「細くて長い形」をしたものからは、すらっとした好印象を持って受け入れてくれているようです。

もちろん蛇などの例外もあるかと思いますが。蛇をきらいという人は、きっと、あの不気味な目、ちょろちょろと出る赤い舌、ぬるっとした表皮などがきらいな原因だと思います。

しかし、蛇をきらいな人でも、蛇の細長い形が、丸くなってとぐろをまいたり、木の幹を伝わったり、岩陰の細い隙間をすばやく通れるなど、場所に応じて、細長い形を変えてすばやく動き回ることのできる自由度の高さには感心されるでしょう。

「細くて長い形」が素晴らしい可能性を秘めていることを教えてくれているようです。