俳句・短歌 短歌 故郷 2020.09.04 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第10回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 写真見る頂き覆う姿哉 美白に光る黄山の雪 朝日浴び吞川縁の通勤路 天空に舞う鷗五羽有り つむじ風木の葉の踊る出勤路 新大久保のメイン通り哉
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『おーい、村長さん』 【第14回】 浅野 トシユキ 「どんなにイヤなことがあっても我慢するんだよ。もし、悲しくなったり辛くなったら…」15歳、実家を離れて就職する私に母は… 出発する前日の夜、「どんなにイヤなことがあっても我慢するんだよ。もし、悲しくなったり辛くなったら、夜空を見上げて、お月様にお祈りしなさいね。お母さんだと思って。そうすれば、絶対乗り越えられるから。すぐ叶わないかもしれないけれど、きっと叶うから大丈夫。お母さんも奈津のことを祈ってるからね」お母さんは遠く離れて暮らす私のことを心配してくれていた。秋田から一緒に来た同級生たちは大半が上野で電車を降りて…