一斉に拍手が沸き上がると同時に彼女の甲高い声が講堂中に響き渡り、歌の中の少年の願いがエリカの声を通して切なく伝わる。
彼女は続けて『Don't Let Me Be Misunderstood 悲しき願い』を歌いあげた。拍手の嵐が巻き起こった。
エンディングは『津軽じょんから節』。石岡の津軽三味線を模した音と共に、三嶋が、
「あまり言いたくないのですが、実はこのザ・ルーズボーイズは今夜をもって解散します。メンバーに転勤者がでたので仕方がありません。今夜は我々の最初で最後の演奏を聴いてもらってありがとう。さよなら」
「やめるな、もっとやれ、転勤拒否しろ」と勝手な声と共に「アンコール、アンコール」との声が囂々(ごうごう)と沸き上がった。
アンコール曲としては加藤が最も好む『さすらいのギター』をしっとりと演奏して、皆が酔いしれて揺られるうちに、ついに幕が下りた。
最後に労働組合の支部長が締めとして、
「このクリスマスパーティーを大いにエンジョイされたことと思います。
ニホンタイヤという会社は仕事に対しては非常に、というか異常に厳しいです。上司の命令は絶対であり、時には理不尽な要求にも従わなければなりません。それで精神的に追い詰められるケースもあります。会社はそのプレッシャーから我々を解放するために、折りにふれ職場対抗スポーツ大会や文化イベントを開催しています。
我々労働組合も今回のクリスマスパーティーだけではなく、スキーツアー、芸能祭などを企画実行し、組合員の気分転換を図るように努力していますから、積極的に参加してください。今年もあと数日を残すのみとなりましたが、最後のひと頑張りをお願いします」と挨拶をした。
次回更新は6月25日(水)、21時の予定です。
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