「それは難しいな。実はちょっと前に東京本店の物資本部から連絡が入り、ニホンタイヤは当オフィスで正式に扱えることになった。『ニホンタイヤは七洋商事にとって最重要顧客の一つだ、しっかりやってくれ』と、はっぱをかけられた。研修生の井原君に主担当をさせるわけにはいきません。

これは当オフィスの重要プロジェクトとして、私自身を担当責任者とし、大田原さんを補佐として登録します。井原君は機械メーカーから派遣されている熊田さんのサポートをしっかりやってください」

大田原は「わかりました」とだけ言った。

井原は落胆の気配は見せず「熊田さんのサポートを一生懸命やらせていただきます。また、ニホンタイヤのビジネスの件で、もし私に出来ることがあればいつでもやらせていただきます」と力強く言った。

こうしてニホンタイヤ商品を担いで、七洋商事アルジェオフィスの石油公団アプローチがスタートした。

次回更新は6月16日(月)、21時の予定です。

 

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