ナギサとティーナは変わらずこのマンションで暮らしていた。ナギサは、ティーナにライフルの扱いなどを教え、ティーナは、髪が伸びて、もうすぐでナギサの身長を抜かしそうなほどにまで成長した。今のティーナは、十三歳。

「朝ご飯作っておいたよー」

「ありがと……」

「ナギサって、あーしが赤ちゃんの時より怠け者になってない?」

「……ティーナは頼りになるからね」

「もぉ」

ティーナは、だいたいのことは一人でできるようになった。生き抜くための知識をナギサが十年間教えてきた賜物だ。

優しく明るい子で、怒ると少し口が悪くなる。どこにでもいる十三歳の女の子……だけでなく、誰に似たのかティーナはどうやらパーフェクトコミュニケーションというものができるようで、文明が栄えていたころに生まれていたら人徳を積んで大成功していそうな子に育った。

育て親の自分が表情一つ変えないロボットだから、ティーナも同じようになってしまうのかと少し不安だったが、感情豊かな子に育ってくれて一安心だ。唯一直してほしいところは一人称が「あーし」というところだ。本人は違和感も何も感じていないが、かなりイタく見える。

ティーナにはもうライフルの使い方も、独りで生きていく術も教えている。でも、ティーナはいろいろと甘い。昔から、思いやりが強い。純粋すぎるんだ。もしも自分が壊れてしまった時、鹿やほかの生物を殺して食事をとることができるだろうか。

今の状態じゃ、ティーナはナギサが壊れた時死んでしまう。

「今日は遠くへ探索に行くんでしょ?」

「あぁ……もう準備できたの?」

「もっちろん!」

「そうか……じゃあ、待ってて」

体を起こして、準備をした。この地域の周辺をティーナに覚えさせておくために、たまに探索に行っている。

「準備できた」

「じゃあ行こう!」

次回更新は6月12日(木)、12時の予定です。

 

👉『テラスの旅路Ⅰ』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】マッチングアプリで出会った男性と夜の11時に待ち合わせ。渡された紙コップを一気に飲み干してしまったところ、記憶がなくなり…

【注目記事】服も体も、真っ黒こげで病院に運ばれた私。「あれが奥さんです」と告げられた夫は、私が誰なのか判断がつかなかった