「いいから、始めるよ」
「慎二先生お願いします」
「先生じゃないよ」
「違う、違う、パティシエよ。あ、ショコラティエか」
「うるさい、そんなんじゃないから。ただの素人料理人」
「ハーイ、慎二先生のチョコレート教室始め」
僕は、小さなパックからカカオニブの粒を取り出して魔女たちに見せた。
「これは発酵させたカカオ豆を焙煎したもの」
「だけどカカオ、これっぽっちで足りるの?」舞さんが尋ねてきた。
「香り付けと飾り用、自分らでカカオから作ったチョコなんて舌触りが悪くて、おいしくないよ。本体部分はこれを使うんだ」
僕は、ベルギー製の板チョコを取り出した。
「なんか普通のチョコじゃん」と美久。期待が外れたような顔をしている。
「そういえばさ、何でチョコって、ヨーロッパが本場なの? 生産地はガーナとかなのに」舞さんが質問してきた。僕は魔女たちに、カカオニブの粒を配って食べさせた。
「甘くない。でも香りがいいね。でもチョコじゃない」
「さっき言ったろ。カカオから、おいしいチョコは簡単に作れないんだ」
僕は、瀬菜さんが心底興味を持ったような表情したのを見逃さなかったよ。俄然、説明に力を入れるようになったんだ。
次回更新は6月30日(月)、22時の予定です。