【前回の記事を読む】彼女のことを恋人のいる悪友に打ち明けた「アプローチしたのかよ」「するわけないだろ、まだ知り合ったばっかだし……」
第4話 13.Feb チョコレーション
新年会は大盛り上がり。拓也が言うように、消極的ながらも僕は作戦を考えた、鍋料理なら僕も席にいられると考えたんだ。鍋を挟んで瀬菜さんと真向かいのポジショニングで、僕は鍋奉行をこなした。みんなアルコールが入ると、さらに陽気になっていったけど、瀬菜さんと二人になるタイミングは結局取れなかった。
そうこうしているうちに、ひょんなことから、今度、僕が彼女らにチョコレート菓子作りを教えることになってしまった。
事の発端は、細川美久さんが去年、ヴァレンタインで自家製チョコ作りに失敗した話から始まった。本人は父親にプレゼントしたと言ってたけどね。まあそれは怪しい。とにかく美久さんは、プレゼントと同じものを自分用に作っておいて、翌日それを食べたら、やたら不味(まず)かったと言うんだ。
「慎二はスイーツ作りもうまいよ」の姉貴の一言から、かくして僕は結局は流れで、女子たちにチョコレート作りを家で指南することになったんだ。ヴァレンタインまでにチョコレート教室を2回開くことになった。まあ、結果として、2回は瀬菜さんに会える。
「ところで、どうやって作ったの」僕はみんなの前で美久さんにヒアリングした。つまりどのように不味いチョコが生まれたのかを、優しく聞きだしたんだ。
「もう普通に、市販のチョコをお鍋で溶かして、型に入れて固めて……」
「そこでもうダメだね。チョコは愛情をかけなきゃ」
「何よ愛情って」舞さんが尋ねてきた。本当は、僕は瀬名さんに聞いてほしかった。
「テンパリングしなきゃ」
「何よテンパリングって? てんぱっちゃうてこと?」瀬菜さんと舞さんは、美久さんを指してキャハハと笑ってる。僕は顔には出さなかったけど、瀬菜さんの笑顔に心臓が止まりそうだった。テンパリングが何かって? まあ君も知らないだろうけどね。