【前回の記事を読む】僕は重要だけど極めて当たり前のことに気づいた――彼女は一体誰にチョコレートを渡すのだろうか

第4話 13.Feb チョコレーション

「最後のチャンスか。まだ3日ある。よし作戦名を考えろ。まずは形からだ」

「作戦名?」

「そうだよ。オペレーション・ヴァルキリーとか」

「何それ」

「アーク・エンジェル作戦とかどう」

「どうでもいいよ」

「よくない! とりあえず"オペレーション・ショコラ"としておこう」

拓也は参謀にでもなったつもりで、僕を弄んでる風だったけど、心の中に、それにすがろうとする自分がいた。

「オペレーション・ショコラでは、ターゲットに対して先制攻撃をかけるんだ」

「どういう意味?」

「心のこもったチョコレートを作り上げ、ヴァレンタイン前に、その瀬菜さんに渡す」

「ヴァレンタインじゃなくて、その前に?」

「そうよ、先制攻撃! 用意周到準備万端先手必勝。瀬島も言ってる」

「それって誰? なんかさ、非常識って思われそう」

「一般論だが、やらなくて後悔することのほうが、やって後悔することより遥かに重いんだぜ」

「そんなこと知ってるよ」

拓也の助言か、酎ハイの力かわからないけど、その時、僕は決心したんだ。

「13日の金曜か。いいさ、構わない。ヴァレンタイン1日前、13日に先制するんだ」

僕は自分の心に何度も言い聞かせたよ。