第1回教室開催。女子3人が家にやってきた。姉貴はいない。どうしてかって?

だいたい、姉貴はヴァレンタインなる風習に納得いかない系だし。そもそもチョコを作るなんてことに、全く興味がないからね。

「マンション、二人で独占してるわけ?」3女子は、うらやましげにキッチンやリビングを丹念に見渡していた。姉貴がいるときはできなかったんだろね。

「でも、この家のキッチン、普通より広いよね」

「本当広い」

「母さん、菓子作りと料理が趣味だったんだ」女子3人は、僕の母親のことはあえて触れないようにしていたみたいなので、僕本人から切り出しておいた。

「ところでさ、おねーさん、なんで料理できないの?」

「さあ」

「慎二くんは、料理人並みなのにね」

「それよりさ、早く準備してよ」

僕は、舞さんと美久さんのおしゃべり魔女二人が消えて、瀬菜さんだけになればと、本当、心から願ったんだけど、それははかない願望で、交代で手を洗い終わった女子たちは持参したエプロンをつけ始めるや否やまたお喋りを再開したんだ。

「何でさ、アイランドにこんなに大きな石のマナ板があるの」

「まな板じゃないよ。それでパイ生地とか伸ばすんだ」

「家でパイ焼くって、考えられないシチュエーション」

「本当、うちなんかじゃ、あり得ないよ」