不合格の通知は自分より先に親が見た。正直、結果はわかっていた。試験問題を解くよりも、消えていきそうな意識を引き留めるのが精いっぱいで、内容なんて頭に入ってこなかった。なんであの日に限って体調を崩してしまったんだろう。貧血で帰りの記憶もあまりない。本調子だったら絶対受かったに違いないと、そう思いたかった。

これが「運」ってやつなのか。親も同じことを思ったらしい。

「運が悪かったわね」

残念そうに母が言った。わかってるよ。そんなこと、いちいち言うなよ。むしゃくしゃした気持ちになる。

「運が味方をしてくれなかったんだ」と心の中で言い直す。やり場のない怒り。

そうだよ。運が悪かったんじゃない。運が俺の味方をしてくれなかったんだ。今の自分にはそう思う方がなんだか自虐的でしっくりくる。あんなに頑張って、やるだけのことはやったのに、何が足りなかったというんだ。

思い描いた学校の制服、校舎、新しい友達。

夢から覚めたように想像していた景色が一気に塗り替えられていく。地元の見慣れた制服、よく通る道沿いの中学校、晃、悟、今いる同級生の面々。

起き上がれないくらいの、落胆。

なぜ運は俺の味方をしてくれなかったんだろう。

健斗は再び考え始める。

一体、俺の何が足りなかったんだろう。自分の気持ちが弱かったから運が味方してくれなかったのか、いや、もしかしたら今私立へ行くより、高校から行った方がいいということなのかもしれない。きっと何か理由がある筈だ。

あれこれ考えるうちに、まるで「運」が自分の扱い次第で変わる生き物のように思い始めた。

そう割り切らなかったら、やってられない。

健斗はそう自分に言い聞かせて天を仰いだ。

 

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