【前回の記事を読む】その熱意は愛情なのか、憎しみなのか――数学教師・沼山に目をつけられた晃。ここには完全な力関係が...

2 中学生

ポスター表彰

「ちょっと」

思わず慌てて取り返そうとする。

「何、恥ずかしいの? そう思うんならもっと頑張りなさい。皆さん、山口晃、数学四十五点」と旗のようにひらひらと振って見せる。

「山口、頑張れ」と他の教科の教師から激励の言葉が飛ぶ。

 教員室に出入りする生徒がこちらを見る。

 悔しさと恥ずかしさで晃は下を向いて唇を噛む。

「悔しかったらもっと勉強しなさい。ほら、特別に宿題」と沼山が自分のファイルからプリントを押し付けるように渡す。

そのプリントをぐしゃっと鷲掴みして教員室を出る矢先、ドアの前で顔を上げると先ほど入ってきた同級生の中に洋子がいた。

洋子とすれ違う。その後ろから「そんなんだから成績が上がんないんでしょ。ちゃんとお礼も言えないでどうすんの。礼儀だからね、礼儀。明日提出しなさいよ」と沼山の甲高い声が追いかけてくる。驚いたように立っている洋子の横を、顔も見ずに唇を噛んだ晃が通り過ぎる。

走りながら恥ずかしさが込み上げてくる。

学校は広いのにどこもかしこも誰かがいて、みんなが晃の成績を知っていて、馬鹿だと思われているような気がして逃げ出したかった。

人の少ない最上階の奥には美術室があった。

晃はそこまで来てようやく足を止める。美術室につながる廊下に貼ってある生

徒たちの絵を見ながら消防のポスターを描いた時の自分を思い出した。

できること、できないことで、こんなにも自分がダメに思えたり、すごいって思えたり、自分の気持ちはまるでジェットコースター並みの振れ幅だな。

他の生徒たちの描いた絵を見ていて少し気持ちが落ち着いてきた。その先には美術室のドアが開いていて、奥には美術部員の描いた絵が並んでいる。その絵に引き込まれるように静かに美術室をのぞき込む。そこに竹内美南が美術準備室から画材を持って出てきた。

「あら、山口君」

「うん……」

「どうしたの? せっかくの昼休み、こんな所で時間潰しちゃったら勿体ないわよ」

「うん……」

美南は、晃の様子に気づいて「ちょっと待ってて」と一度準備室に戻ると古びたスケッチブックを持ってきた。

「古くて破けそうになってきたんでちょっと手入れしてるのよ。見る?」

「あ、見たい。先生の?」

「ではないな。先生のおじいさんの。だいぶ古いんだけど、先生の宝物」

「見ていいんですか?」

「いいよ」

その古いスケッチブックは色あせていて、下手に触ると破けてしまいそうだった。美南は椅子を二脚引き寄せると、晃に隣に座るように勧めた。

スケッチブックを目の前にして思わず、

「なんか、すごいボロボロっすね」

美南はちょっと笑って「そうなのよ」と言いながら丁寧にページをめくる。紙の間から少しカビ臭い匂いがした。そこには昭和の時代の風景が描かれている。