【前回の記事を読む】インスリンを発見したバンティング博士は1923年にノーベル生理学・医学賞を受賞。それまでは重度の糖尿病は命を落とす病気だった
第1章:糖尿病の病態・疫学
14.1型糖尿病
M:あきさん、糖尿病って大きくいくつに分類されるか覚えていますか?
A:1型、2型、その他、妊娠の4つだったと思います。
M:よく覚えていましたね。ここからは1型糖尿病についてお話ししていきます。1型は親から子への遺伝は数%程度と低く、2型のような生活の乱れではなく、自己免疫システムの暴走で発症する糖尿病です。
A:自己免疫システムの暴走?
M:本来免疫は、外敵である細菌やウイルスなどを攻撃し、私たち自身の体は攻撃しないように制御されています。しかし、何らかの原因で自己免疫システムが暴走してインスリン工場(膵β細胞)を攻撃して、インスリンがつくれなくなってしまうのが1型糖尿病です。
A:自分を守るはずの免疫システムの刃が自分に向く、すごく怖いですね(汗)。ところで膵臓への免疫の暴走、どうやって診断するのでしょう? 診断が難しそうな気がします。
M:診断法はいくつかありますが、血液検査でGAD抗体などの自己抗体を調べるのが一般的な方法です。
A:血液検査で診断できるんですね! 抗体という言葉、新型コロナウイルスの蔓延でよく耳にするようになりました。外敵を倒す弓矢みたいなものですよね。1型ではGAD抗体などの自己抗体が膵臓を攻撃してしまうんですね?
M:実は、検出される自己抗体そのものは膵臓の攻撃には加わっていないことが分かっていますが、難しい話になるのでこれ以上深掘りはしません。1型は血液検査で自己抗体測定と覚えておいてください。
A:1型は子供に発症しやすいイメージがありますが、大人に発症することもあるのでしょうか?
M:おっしゃるとおり、1型は小児期の発症が多いとされていますが、最近の研究では1型の半数は30歳以降に発症するという報告もあって、私の患者さんでも80代で1型と診断した方がいます。
A:思ったより大人での発症も多いんですね!
M:あと、1型は他の病型と比べて急性発症が多いという特徴があります。例えば、2型は発症まで10年以上を要するのですが、1型では「先週は異常なし、今週は高血糖」くらい急な経過をたどることもあります。