【前回の記事を読む】血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリン。しかし、実は肥満ホルモンだった?
第1章:糖尿病の病態・疫学
11. 膵臓はインスリン工場
M:ランゲルハンス島にあるβ細胞でインスリンがつくられ、血液中へ分泌されます。例えば、あきさんがお菓子を食べると、お菓子の中に含まれるブドウ糖がβ細胞を刺激して、瞬時にインスリンを分泌させます。
A:瞬時……、ものすごく速そうな感じですが、どれくらい速いのでしょうか?
M:私が大学でβ細胞を使った実験をしていた頃の話ですが、β細胞にブドウ糖をふりかけると1分後にはすでにインスリンが分泌されていたので、ブドウ糖に対するβ細胞の反応は「秒単位」であると推察されます。
A:ブドウ糖に対するβ細胞の瞬発力、すごいですね!
M:血糖値が上がり過ぎると体に良くないので、素早く血糖値を下げるシステムが発達しているのだと思われます。
A:確かに、高血糖が体に良いものなら、血糖値をすぐに下げる必要はないですもんね。
12.インスリンはノーベル賞受賞物質
M:インスリンの歴史を少しお話ししようと思います。インスリンの歴史は比較的浅くて、発見されたのは1920年代です。
A:あれっ? もっと昔に発見されたと思っていました!
M:何となく古い物質のイメージがありますが、インスリンは発見されて100年程度しか経っていないんです。インスリンが発見されるまでは重度の糖尿病、特に1型糖尿病は命を落とす病気でした。1型糖尿病ではインスリン分泌が枯渇してしまうことが多く、インスリン発見前は食事で摂取する糖質を極力減らすような治療法しかなかったようです。