【前回の記事を読む】2時間で着くところを4時間かけて走った。車一台とも、ひと一人ともすれ違わなかった。早朝とはいえ、整備された県道なのに…

旅物語――旅に学ぶ (国内編)

尾瀬の自然・地球の深部が地表に浮かぶ

毎年30万人が訪れるという尾瀬。数年前さすがの尾瀬の地塘(ちとう)のきれいな水も大洪水で茶色く濁ったといいます。それでもようやく3カ月後には元の澄んだ水に回復しました。自然の凄さです。

高原台地に形成された湿地帯である尾瀬には「アカシボ」という現象があると聞きました。4月からしばらくの間、池塘のみずたまりが赤潮のように染まる現象です。これを研究してきた学者がようやくその謎を突き止めました。

それはジオバクターという菌によるものです。この菌は酸素の代わりに鉄分を食らって生きる微生物とか。

例えば深海の酸素のない地割れからマグマを吹き出し、なんの養分もないように見える深海でも生き物がいるのです。こうした過酷な所で生きる生物の栄養源でありプランクトンです。

このジオバクターが泥炭層の浅い尾瀬のような水たまりで繁殖している不思議な現象。まさに古代からの自然の営みがここにあるといいます。

尾瀬沼で春からしばらくの間に見られるある種の赤潮現象です。アカシボ(赤渋)の奇跡です。これぞ自然の神秘です。

アカシボ

今地球はようやく国連によって「持続可能な開発目標(SDGs)」の設定にこぎつけました。(注1)こうした自然の神秘は、その必要度をますます高めていく証しにもなります。

記忘庵日誌 2018・6・6