【前回の記事を読む】「不審死した二人と元同級生である看護師について、警察が関連を調べています。」…非常にまずい。これではまるで彼女が犯人だ

眠れる森の復讐鬼

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。確かに俺はあいつらを殺してやりたいと思う時もある。だが、本当に殺したりはしない。それに、君らが見たという梨杏のことはどう説明するんだ? あと、確かに今一日四回もインスリン注射しているけど、今のところ毎回、看護師さんが持ってきて注射してくれるだけで、俺がインスリンを持っているわけじゃない。勘違いもいい加減にしろよ。大体それを言うなら、君だって怪しいぞ」

「僕が?」

「君と梨杏がどういう関係だったか俺には分からないが、君はあいつらの同級生だ。しかも、あいつらが搬送された直後に入院してきた。アリバイが無いのは君も同じだ。あいつらに何らかの恨みがあって殺害に及んだ可能性も否定できない。捜査を攪乱させるために梨杏の生霊を見たと、一夏ちゃんと示し合わせたという筋書きも成り立つ。どうだ」

海智はすぐに反論しようとしたが、その時に山本公園で最後に見た梨杏の顔が脳裡に浮かんだ。彼女とあの公園で話したことは金清にも一夏にも言っていない。心の奥底に密かにしまい込んでいる。それが長年自分を苦しめてきた。

彼女を虐め抜いたあいつらを殺してやりたいのは彼も同じだ。だが、あいつらを殺したところで、梨杏の死に対する彼の責任は決して消えない。この苦しみから逃れたいばかりに、今探偵ごっこなどをしているのではないだろうか。そう思うと、彼の言葉は詰まった。

「まあいい。俺達が疑心暗鬼になっても仕方がない。とにかく一夏ちゃんが戻るのを待とうじゃないか」

金清の言葉に海智は力なく頷いた。そこへ看護師の見野が検温にやってきた。

「すみません、石破さんはどこにいますか?」

海智の問いに彼女は戸惑っていた。

「それが・・・・・・警察に行きました」