「警察? 一夏はもう警察には説明したはずだけど」
「それが、もう少し詳しく訊きたいからと言って、警察署まで行くことになったみたいなんです」
海智は唖然として言葉も出なかった。見野が部屋を出ると、金清の方を振り返った。
「まずいことになったな。県警のペースに乗せられなければいいけどな」
金清は眉間に皺を寄せ、顎を擦りながら言った。
「待て、話がある」
食べ終わった昼食のトレイをいつもの仏頂面で下げようとする宇栄原桃加を海智は捕まえて言った。
「何よ」
桃加は彼の手を振りほどいて睨みつけた。
「大聖に続いて、嵐士も死んだ。これでもまだ関係ないと言うつもりか」
桃加は顔を背けたが、土気色のその顔が彼女の狼狽を表していた。
「あんたもぐるか?」
「は? 何のことだ」
「石破一夏だよ。あいつが二人を殺したんじゃないかって皆噂してる。あんた、あいつと仲がいいらしいじゃないか。あんたも共犯じゃないのか」
「何言っている。俺も一夏も人殺しなんかしない」
「どうだか。信用できないね」
「この二つの事件は明らかにお前達が虐めてあそこまで追い込んだ信永梨杏の復讐であることは間違いない。次に狙われるのは高橋漣とお前だ。それでも彼女に悪いと思わないのか。どうして平気な顔でこの病院で働いていられるんだ」