【前回の記事を読む】天井をぼーっと見続ける。やっていない証拠、もしくは目撃者などいなかっただろうかと…

スクリーン ~永遠の序幕~

外の景色

検察官の声色を聞いて分かったことがある。俺は未確定なものを見出し期待する。更にはその物語を勝手に膨らませる癖があるのだ。不快な目覚めだった。つまり、俺は止まっている、そして社会は進んでいる。これだけは痛感させられた。

「どうしましたか? 動機を話してもらうことはできませんか?」

只野さんは一緒に謎を解明する気ではなく自分の仕事を全うしているだけだ。俺はまた黙り、ぼんやりと一点を見つめ続ける。

「先に弁護士の方とお話をしていただきましょう」

只野さんが横にいた人に言う。弁護士という言葉を聞いて大きな可能性を感じる。弁護士にこの状況を話せばきっと分かってくれる。それを俺の代わりに上手に伝えてくれる。

「はじめまして。弁護士の加藤と申します。君の弁護をするからには、正直に話してもらいたい。それを基に刑を軽くするよう要望します」

俺は無罪を訴えたいのに、すでに有罪のレールを敷かれている。弁護士との面会というのは名だけで、取調べと何も変わらない。こんなに否定的に考えてしまう俺は間違っているのだろうか。やっていないのにやったと答える人がいる気持ちも分かる。なにより辛いのは、この狭い空間を含め、この世は「当たり前」という秒針を淡々と苦なく押し進めていることだ。

先日の裁判所からの帰り道。あの日、車から見た外の景色は驚くほど綺麗だった。子供を連れたお母さんが歩いていて、年配の方がゆっくり横断歩道を渡る。こんな日常生活が本当に羨ましい。部屋で丸くなって素直にそう思いながら笑ってしまった。そんな自分が滑稽に見えるのだ。

ドミノのように、ゆっくりと、しかし着実に心が崩れていく。そして、並べた牌(はい)が倒れる度にいつものノイズが視界に走った。これほど規律のあるものは初めてだ。