【前回の記事を読む】勾留延長の手続きに国選弁護人、まるで社会科見学だ。パトカーの中、不気味なほどに他人事に感じていたが…

スクリーン ~永遠の序幕~

外の景色

10月11日6時半前、刑務官に起こされる前に自分で起きた。遂にこの生活にも慣れてしまったということなんだろうか。今日こそ取調べがある。

人と話せると思うと嬉しい。たとえそれが尋問であっても構わない。何か進展があるかもしれない。しかし、既に10時である。

「今日の取調べは何時からですか?」

「昨日も伝えてあるように、土日、祝日の関係で14日まで取調べはない」

そんな先まで放っておかれるのか。啞然(あぜん)とした。取調べをしないことで精神的ダメージを与え、結果として自白を促すという作戦なのかもしれない。昨日の小川さんの優しさもこのもどかしさを強めるための一環ならつじつまが合う。

「正直に話をするので取調べをしてください」

俺はまた変なことを言っている。

「昨日も伝えたが、今後の事情聴取等は我々警察ではなく検察に代わる。検察の方々は土日、祝日は取調べを行わない」

自分にがっかりする。全くと言っていいほど話を聞いていなかった。もはや恥ずかしさなど微塵 (みじん)もなく、警察官が俺に対して抱く嫌悪感にすら同調でき、有希が別れたくなる気持ちまで分かるような気もする。

今日はもう会話をすることはない。そう考えるだけで、不安の闇に呑み込まれる。そして再び「俺がいなくても社会は平然と回る」という死の宣告をされるのだ。

読書を満喫する余裕などない。今は「仮にも」や「もしかしたら」などと想像ばかりしてしまう。取調べを自分から希望するなんて、どう考えても普通ではない。俺は今、自分が思っていた以上に人と関わっていたいみたいだ。

新しい感情さえも生まれてくる。本当に殺意は無かったのか。