自白の決意

10月19日朝7時。俺は、かつてない覚悟を抱いている。

「結婚までしようと思っていた有希に別れを告げられ、生きる希望を失いました。有希が他の人と幸せになると思ったら、その悲しみが怒りに変わり、あろうことか有希を崖の先に突き落としました。でも、人殺しになる勇気もなく、とっさに有希の手を掴み助けました」

口に出して練習をする。この先を受け入れて前へ進む――自分にそう言い聞かせている。

コツコツと響く警察官の足音が近づく。ボリュームを増していくカウントダウンの音に不安も連動するが、不思議と心の芯は平静を保っている。

「今岡蒼斗、10月19日。午前9時不起訴にて釈放。外に出なさい」

耳を疑い、言葉が出ない。安堵の気持ちもない。自白しようとすると釈放されるなんて、いったいどうなってるんだろう。早くしなさいという眼差しの警察官にやっとの思いで声をかける。

「すみません、不起訴ってどういうことですか?」

「不起訴は不起訴だ」

「俺の思いが通じたってことですか?」

「容疑は晴れている。思いが通じるとか感情的な話ではない。本件は泉有希さんによる虚偽申告として別の捜査が行われている」

「虚偽申告ってどういうことですか?」

「有希さんが事実と異なる被害届を出していたということだ」

 

【イチオシ記事】朝起きると、背中の激痛と大量の汗。循環器科、消化器内科で検査を受けても病名が確定しない... 一体この病気とは...

【注目記事】どうしてあんなブサイクと妻が...亡き妻の浮気相手をついに発見するも、エリート夫は困惑。

【人気記事】二ヶ月前に被害者宅の庭で行われたバーベキュー。殺された長女の友人も参加していたとの情報が