【前回の記事を読む】大学合格発表が新婚旅行の代わりに。息子の受験合否確認をしに、両親も東京へ来ることに。

第2章
自分の特徴を理解するには多様な経験が必要だ
受け身の姿勢から脱皮し、自らの意志で前に進む

M君との対話
(生存バイアス・現状維持バイアス・学業的自己効力感)

さて、いつも難しい話になってすまないけれど、心理学の分野では、「生存バイアス」という言葉があるんだ。

バイアスは偏見、先入観という意味かな。これは、簡単にいうと、一部の成功例だけを取り上げて、それを一般的な方法としてしまうことなんだ。

たとえば、おじいちゃんの時代には、受験生の間で「四当五落(よんとうごらく)」、つまり、4時間睡眠で受験勉強すれば合格、5時間睡眠だと不合格ということがまことしやかに言われた。

それに、浪人することも割合普通のことだったんだ。高校は4年生まであるとも言われた。でも、これはある特殊な受験生だけの話であって、当時の誰かがおもしろがって取り上げたことなんだよ。こんな例は、世の中にはたくさんあるんだ。

おじいちゃんが、よく言っているように、少し時間はかかっても、いろいろな情報を参考にしながら、M君に適した勉強法を見つけてほしいね。

M君 わかったよ、まずは指先を切った軍手は使わないようにするね。

おじいちゃん ははは、そうだね、今の部屋はすきま風もなく部屋は十分暖かいしね。でも、指先を切った軍手、意外に温かくて鉛筆も握りやすいぞ。真冬に一度試してみたら?

M君 なんかみんなに笑われそうだな……。

おじいちゃん いやー、意外にうけるんじゃないかな。今日は、じつは、もうひとつ話したいことがあるんだ。「現状維持バイアス」だ。