慰安婦問題についての日韓合意があった。私は韓国の二つの裁判、「産経記者の名誉毀損、無罪」、「憲法裁判、却下」の判決を見て間髪を入れず岸田外相に訪韓を命じた安倍首相の決断に、今回は妥結すると思った。そういう「気合」があった。

同時にそれは、韓国に対する最後通牒であったと思う。安倍外交の切れ味を感じる。

「軍の関与」を認めたことを問題視する人もいるだろう。しかし軍が関与しなかった、与り知らなかった、というのは無理だと思う。軍にとって(いかなる軍にも、韓国軍も、米軍も、そしていかなる時代にも)それは重要な関心事のはずである。最大の、というより唯一の受容者が、その商品の由来にまったく関知しなかったとは、無理のある主張である。

ただ大日本帝国陸軍が、軍政・軍令として慰安婦の徴集を行ったことは、それはなかった、ということであろう。実際に先端で女を集めたのは、韓国ならば韓国人であった。日本人慰安婦を集めたのは日本人であった。「女衒」という言葉があった。

言葉があったことは、実在したのである。今もいるであろう、日本にも韓国にも。

その当たり前に考えられることに、韓国人は“白を切って”きた。慰安婦集めにおける韓国人の関与を『帝国の慰安婦』に書いた朴裕河(パク・ユハ)氏は、告訴された。どのような判決が下されるのか。

韓雲史氏がかつて、「良い日本人もいた、悪い日本人もいた。良い韓国人もいた、悪い韓国人もいた。それだけのことだ」と書いていた記憶がある(書棚のどこかにその言葉はあると思うが、どうしても見付けられない。『玄界灘は知っている』『玄界灘は語らず』のいずれかの中にあると思う)。

悪い韓国人もいた、ということを韓国人が認めない限り、歴史認識の一致など、あり得ないのである。今回の妥結は、非常に良かったと、私は評価する。安倍さんだからできたのであろう。

しんどいのは朴大統領の方だと思う。[時事通信]12月31日(木)15時14分配信によれば、朴大統領は国民へのメッセージで、「合意を受け入れず、白紙に戻せと言うなら、政府には元慰安婦の存命中にこれ以上何もする余地がないということを分かってほしい」と理解を求めた、という。

時事は配信タイトルで、“これ以上の合意無理”と記している。余計な注釈タイトルであるが、これは稀に見る率直な発言で、この通りなら朴さんを見直す。朴さんは安倍さんの財布の中にこれ以上ないことを認識したのである。安倍さんは財布の底を見せ、これだけしか入っていないことを朴さんに認識させたのである。

私は韓国が好きで、何度も行った。韓国で不愉快な目に遭ったことは一度もない。接する誰もが親切であった。

しかしこの数年、慰安婦を巡る余りのしつっこさにイヤになっていた。多くの日本人がそうであるだろう。貿易、旅行など、いろんな指標にそれは出ている。

この修復は年月を要すると思う。日本人は相当に痛めつけられた。10年では元に戻らないであろう。

静かな年の暮れである。おかげさまで良子もそれなりに元気で、徐々に食べる量も増えてきた。抗がん剤の副作用も、恐れたほどには出ていない。よくしゃべる。少しは料理もするようになった。

私は良子にわがままいっぱいをしてきた。良子はそれを受け入れてくれた。私は、自分が良子に与えることを、考えることはなかった。

それが突然、良子が、精密な硝子細工になった。はれものにさわる、もろいものになった。私はその良子を守る。そしてそのことに、まだ味わったことのない充足を感じる。それは間違いなく、幸福感である。

次回更新は5月4日(日)、20時の予定です。

 

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