久しぶりに大学に行った。空手部のたまり場に行くと先輩がいっぱいいる。
「健、お母さん、大変だったな」
「もう大丈夫かい」
なぐさめられると逆に落ち込む。
「いえ、覚悟はだいぶ前から、してましたから」
「そうか、落ち着いたら部に出てこいよ」
「ありがとうございます」
そこへ京子がやってくる。
「健、日誌読み進めてる?」
「日誌って?」先輩が聞く。
「健の父親は考古学者でその調査日誌が出てきたんです」
「なんか、面白そうだ」
「京子、余計なことを言うなよ」と強い口調になる。
「ロマンがあるな。読みたいよ」
「いえ、もっと地味でして、映画のようにいろんなことがすぐ発見できるようなものではないです」と声のトーンを落として話す。
「それはそうだろうな」
「健、日誌は読んでる?」京子が先輩たちにかまわず、また同じことを聞いてきた。
「ああ、少しずつ読んでるよ。色々調べながら、読んでるんで、時間がかかるんだ」
「手伝うよ」
「ありがとう」
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