【前回の記事を読む】遂に見つけた!母が隠していた父の日誌。中国、イタリア、世界を飛び回る父は一体何を調査していたのだろうか......
第一章 母の死と父の面影
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神経が張り詰めていたのと、あまり覚えていない父の自分に対する思いで、かなり疲れていて、知らないうちに眠ってしまった。起きると「帰るね」というメモをおいて、京子はいなくなっていた。
次の日、京子からメッセージが来る。
「昨日の日誌凄かったね。これからどうするの?」
「もちろん日誌も読み進めるけど、父の友達だった糸井先生に会ってみようと思う」
「お父さんの研究の足取りを追うのね」
「そうだね。父がマルコ・ポーロの研究をしていたのはわかった。でもそれで終わりでなく、何を目的として研究していたのかを知りたい」
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父の学友の糸井教授を訪ねる。父と糸井教授は、大学時代から6年も一緒に勉強してきた仲だ。
「健君、大きくなったね。明子さんが亡くなったんだって、明子さんも若いのに本当に残念だ」
「今日は父の研究について伺いたいのですが、父はマルコ・ポーロの何を研究していたのですか?」
「亮は、まずはモンゴル帝国に興味を持ったんだ。なぜ、草原に住んでいた一族が、世界最大の帝国を築くことができたのかという史実に強く惹かれていた。
その中で、フビライ・ハンが領土を拡大し、大国を作った。そのフビライ・ハンに寵愛されていたのが、マルコ・ポーロだった。亮は調べていく中で、マルコ・ポーロが特に好きになり、東方見聞録に書いてあるマルコ・ポーロの足取りの研究をしていた。
どこに行ったかだけでなく、東方見聞録に書かれていない任務なども調べていたが、700年以上も前のことで資料も少ないし、なかなか大変な調査をしていたよ」
「父の日誌が見つかったんですが、後半の部分は、見たことのない文字で書かれているんです。こういう文字なのですが、わかりませんか?」