【前回の記事を読む】亡き母からの手紙が伝えるのは、自分の人生に覚悟を持てというメッセージ――ある日僕を促すように、ベネチアへの航空券が届いた
第二章 人生を大きく変えるベネチア旅行
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京子からは、すぐ「パパのOKでた!」というメッセージが送られてきた。
その日から急に忙しくなった。パスポートを取りに行ったり、本屋でベネチアのガイドブックを買ったりである。ベネチアは小さい街だ。水の都と呼ばれている。マルコ・ポーロの子孫と会うので、マルコ・ポーロの事をもっと調べてみる。1200年代の人なので、そんなに資料があるわけでもないが、ネットや図書館で調べられることは調べてみた。
それにしても、皆目見当がつかない。どうして、僕に招待状が来たのか、これは何を意味しているのか―、考えてもわかるわけがない。行ってみるしかない。
成田空港まで、京子のお父さんの真おじさんが送ってくれた。
「健君、京子をよろしく頼むよ」
「いえ、私の方が、お世話になると思います」と弱々しく返答する。
「パパ、大丈夫よ」
「健君、ベネチア空港で日本語を話すファビオという迎えの者がいるので、心配しないでいいよ」真おじさんは色々と気遣ってくれ、僕を安心させようとしてくれる。
「何から何までありがとうございます。それでは行ってきます」
「パパ、それじゃあね。メールするから」
「気をつけて行ってきなさい」
京子のお父さんと別れ、出国審査を受け、搭乗口へ向かう。
ここは正式に言うと、日本ではないらしい。初めて日本から離れるということ、わけのわからない招待状を持ってベネチアに乗り込むことで、通常の精神状態ではない。不安だけど、何か父のこともわかるかもしれないと期待もあるし、一種の興奮状態にある。
一方、海外に行きなれている京子は僕よりずっと冷静だ。免税店であれこれ免税商品を見ている。
そろそろ飛行機に乗る時間だ。いよいよ出発だ。