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ローマで国内便に乗り換えマルコ・ポーロ空港に着く。出口に漢字で僕たちの名前を書いたボードを持った大きな男が立っている。おそらくファビオという男だ。
「すみません、ファビオさんですか?」
「こんにちは、ケンさんとキョウコさんですね」
思った以上に流暢な日本語で驚いたが、東京で日本の会社に5年ほど勤めていたそうで、真おじさんとは仕事で知り合ったようだ。空港からベネチアまでは、水上バスで行く。なんとも風情があるなと独り言を言っていると横で京子が笑っている。
水上バスに乗って、ベネチアに向かうと水の都という意味がよくわかる。まるで海の上に人工に作られた都市のようだ。街中に人がすれ違うのも大変なほど狭い道が無数にある。
家の中まで水が入ってきている家もある。家に船がある家も多い。まるで自転車のように船を使っているのだ。街並みもとても綺麗だ。パステルカラーの家が多く、メルヘンな場所に来てしまった。今、自分の置かれている環境とこの風景がマッチしていて、まるで映画の世界に間違って飛び込んでしまった感じだ。
そんなことを考えているとホテルに到着した。専用の船着き場に水上バスが着き、裏からホテルに入る。ホテルの人たちが一斉に「ボンジョルノ」と陽気に声をかけてくれる。京子も「ボンジョルノ」と言い返している。
「今日はゆっくり休んでください。パーティーは明後日なので、明日は観光に行きましょう。さきほど、ポーロ家の人たちにもケンさんが到着したと報告を入れました。凄く喜んでました」
「ファビオさん、どうして私は招待されたのでしょう。何か知ってますか?」
「よく知りませんが、明後日わかりますよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「健、明日どこに行くか一緒にガイドを見てみない?」
「京子に任せるよ。僕はどこでもいい」
「わかった。それじゃ、明日の朝一緒に朝食食べよう」
「じゃ、8時にロビーで、おやすみ」
「おやすみ」
部屋に着く。気分が高まって飛行機ではよく眠れなかったため、睡魔が襲ってきた。