目覚まし時計のベルが鳴っている。朝だ。気がつくと7時50分だ。あわてて服を着替えて、ロビーに行く。京子はすでに、観光ガイドを持って椅子に座って待っている。
「おはよう」
「おはよう。よく眠れた?」
「ああ、ぐっすりだよ」
「そう、行きたい場所を考えたから、そこでいいか見てよ」
「どこでもいいよ。任せるって言っただろう」
「そうだけど、確認してもらってもいいでしょう」
「わかった。腹が減ったから、食べながらにしよう」
「そうね、ここはビュッフェスタイルよ。レストランに行きましょう」
レストランは1階にあった。赤い絨毯が敷かれていてとてもゴージャスな感じだ。ビュッフェ形式なので、あれもこれもとってしまって凄い量になってしまった。京子はいつも小食だ。僕はどうみても京子の3倍はとってきてしまった。
「何その量?」
「ついつい取っちゃって……」と自分でも焦っている。
「残さず食べなさいよ」
「わかってるよ」
「早速だけど、今日はまずサンマルコ寺院に行って、鐘楼に上って、昼食を食べたら、ゴンドラに乗ろう、いいでしょ。そのあとは、博物館と美術館に行きたい」
「わかった、わかった。そうしよう」
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