【前回の記事を読む】捨てられた僕の脚本を拾った先輩は「もっと私に夢を見せてよ」と泣いていた
第二幕 ほしいもの
「へぇ……へぇ~」
棒アイスにかぶりつきながら、先輩は僕の後ろを歩いていた。
「先輩だって、頭押さえてたじゃないですか。それも十分かわいいトコですよ」
……ん? 僕は今、なんと?
かわいい? 先輩を?
口走ったことを自分で理解するのに、少し時間がかかった。
僕は恐る恐る先輩の方を振り向く。
「かわいい……かわいいかぁ……」
少し赤くなった先輩の顔だったが、僕の言葉でさらに赤みを増す。
「……照れてます?」
「うっさい! おバカ!」
先輩の顔は、ますます真っ赤になっていく。それはまるで、夏の暑さを体現しているようで。僕は笑った。先輩も、つられて笑う。
気づくと、いつもの河川敷にいた。
「ねぇ、コウくん」
「はい?」
先輩は急に立ち止まると、じっと僕を見つめる。そして静かに口を開いた。
「私ね……本気で俳優を目指そうと思ってるの」
「そうですか」
「その……私のこととかで迷惑かけるかもしれないし……嫌なら……」
僕は階段に座り込む先輩の前に顔を持っていき、先輩の目を見つめる。
「僕が嫌なんて言うと思います?」
「……え?」
「迷惑なんて言ったら怒りますよ。先輩の夢なんだから、僕にも応援させてくださいよ。それに先輩、言いましたよね。僕の見せる夢、楽しみにしてるって」
僕は先輩に手を差し伸べる。
「だから、また一緒に頑張りましょ」
「……ありがとう、コウくん」
そこには、高校時代と変わらない、歯を見せながら笑う先輩がいた。
……あぁ、やっぱり。
これだから、僕はこの人から目が離せないんだ。
これだから、僕はこの人を意識してしまうんだ。
これだから、僕はこの人のことが、好きなんだ。
先輩は僕の手を取り立ち上がる。そのまま、僕たちはしばらく見つめあっていた。先輩の目はどこまでも蒼く透き通っていた。僕はその瞳に吸い込まれるように顔を近づける。そして……
額にだけキスをした。
「今日はこれで、勘弁してください」 僕は気恥ずかしくて、顔をそらす。
先輩は、目をぱちくりさせて固まっていた。