東舞鶴 八月十二日

『昭和前期日本商工地図集成』(柏書房 1987.6) 第2期(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀・三重)
海軍の都
街の東側を流れる与保呂川には、五つの橋が描かれている。南から西国橋、桜橋、養老橋、萬代橋。港に近い最北の橋だけ、なぜか図柄のみで名称の表記がない。
幅二十メートルほどの与保呂川に架かる目の前の橋は、「新舞鶴市街図」に記載されているのと同じ、桜橋の文字が親柱に彫られていた。とくに目を引く意匠もない、無機質な鉄橋だ。それほど古いものではない。
昭和八年版「新舞鶴市街図」は、手書きで作製された簡素な地図だ。少し丸みを帯びた字体で、施設や商店の名称を丹念に記した箇所もあれば、何の表記もない空欄の一画も目につく。分度器や物差しを使って引いたらしい区割りを示す線は、ところどころ折れ曲がってもいる。
私は旅に、訪れる街の古地図をよく持参する。古地図を眺めながらの街めぐりは、現在の光景に昔日の面影を重ねることができ、その街の幾星霜を旅しているような気分を味わえる。
愛らしい手工芸品のようなこの地図を頼りに、これより舞鶴をめぐりたい。
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