「あんた、ちょっと勉強ができるとおもって生意気や。今日の数学の時間の態度はなんや」
雪絵は眉間に皺を寄せた。
「今日の数学の授業? ああ、助け船のつもりだったのよ」
「数学のテスト、あんたはいつも百点。あたしは零点や。惨めや。それはみんなも知ってることやから気にしてへん。けどな、みんなの前で答えられんあたしの代わりに答えるなんて侮辱や。許せん」
それから雪絵とその仲間のいじめが始まった。
放課後、学校の門の外で待ち伏せされ、無理矢理コンビニに連れて行かれた。その後はお定まりのコース、万引きを強要されそうになった。
数学教師の母に迷惑をかけまいと、現金を渡すことで万引きの強要は避けられたが、毎日、沙那美の小遣いは雪絵たちに召し上げられた。幼いときから貯めてきた貯金を密かに取り崩して対応していたが、二カ月ほどでそれも底を突いた。
しかし、雪絵は容赦なく、今度は十万円を用意しろ、と言う。
学校の担任も雪絵のことは見て見ぬ振りを決め込んでいる。相談できる人は母しかいないが、それもできない。
沙那美は夜も眠れなくなった。
うとうとしても般若が現れ、しきりに沙那美に十万円作れと督促する。
次回更新は4月7日(月)、22時の予定です。
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