ひきつっていたあい子の顔がさっと和らぎ白い歯が見えたとき、私は良い結果を直感した。
1. 胃にがんは見当たらなかった。検体の検査結果が出なければ確言できないが、CT、内視鏡では、がんは見えない
2. 最初にあってその由来を心配した腹水も、消えている。
3. 昨日話したのは、印環細胞が検出されていて、これは大腸がんにはほとんど見られないものである。てっきりスキルス胃がんから来ており、腹水もそれ故と思った(スキルス胃がんというのは昔、逸見政孝という人気テレビキャスターが48歳であっという間に亡くなった、攻撃性の強いがんである)。
4. 大腸がんに印環細胞の存在することは、非常に稀であるが皆無ではない。私自身も3例ほど知っている。
5. お母様のがんは、非常に珍しいがんである。
そして、
6. 月曜日(28日)に、PET─CTの予約を取ったのち、退院して下さい。予約日は9月29日~10月2日の間として下さい。
7.9月30日、注腸検査(バリウムをお尻に入れる)、採血、呼吸チェック、心電図を行って下さい。
8.10月6日、外科の会議に掛けます。
9.10月7日、手術の打ち合わせをします。
私は、
「現在確認できた範囲では、大腸がんで他に転移しておらず、その部分を切除する、ということでしょうか?」
「その方向です」
「今日の検査で予測される、最良の結果であったと考えて良いでしょうか」
「精密な検査結果はこれからですが、視認できる範囲では、そうです」
「手術はいつ頃になりますか?」
「それは10月6日の外科の先生方の会議で決まります」
「できるだけ早く、お願いします」
毎日毎日刻々、がんは大きくなっていくような気がする。1日でも早く!
私たちはA先生に深くお辞儀して、部屋を出た。
エレベーターに乗って、あい子と二人でバンザイした。
大腸がんであることは確定であるからバンザイでもないのであるが、転移がなければ、局部を切って捨てれば良いのである。実際に私の周囲にも、大腸を切って5年10年、ぴんぴんしている人はいっぱいいる。
お伊勢参りは去年の午年1月から始めて、月ずらしで毎年1度、参拝することにしている。来年は3月である。
次の午年には、私は84歳、良子は81歳で、再び1月の参拝になる。
それまで二人揃って健在であれば、それで十分ではないか。十分すぎるではないか。
次回更新は3月31日(月)、20時の予定です。
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