2014年7月7日(月)
ボケるのは恐怖だ

私は60になってから劇場へ通うようになった。70を過ぎて病み付きになった。

今では芝居を観るために、元気で長生きしたいと思う。

目と耳と足。

舞台というもの。それは、人間が自らの肉体のすべてを使った「表現」。

この面白さに目覚めたのは、「劇団四季」であった。

四季劇場の『春』『秋』『自由』が勤務先の徒歩圏にあって、ほとんどすべての公演を、演目によっては何度も観た。浅利慶太さんもよく見かけた。

私は小澤征爾さんを好きで、ただ小澤さんを確実に聴きたいという理由で、新日本フィルハーモニーの最初期からの定期会員である。

その小澤さんがNHK交響楽団にボイコットされた場面での浅利慶太さんたちの対応は、それ自体、素晴らしいミュージカルの素材だ。「立て、征爾。燕尾服を着けよ」、そして征爾はオーケストラのいない、聴衆もいない、誰もいないコンサートホールで、その日予定された全プログラムを振る。征爾の中でどのような音が鳴ったのか。

そして征爾は出発した。

小澤さんと岩城宏之さんの能力の差は、私には判定できない。私に分かるのは小澤さんはNHKに排斥され、岩城さんはNHKに可愛がられたということである。

今の私は、四季へ行くのは年に4、5回になって、歌舞伎を中心とする日本の古典芸能にのめり込んでいる。が、その端緒は、浅利慶太さんの『劇団四季』であった。

その浅利さんが『四季』の経営から離れたと聞く。端的には、ボケがきたそうである。

レーガンもサッチャーも浅利さんもボケたとすれば、アタマを動かしているだけでは、ダメのようである。

自分の「終い」を、コワイものから順番に書く。

1.元気でボケること(これは恐怖である)

2.脳は正常で、寝たきり(ツライだろうなあ)

3.ボケて、寝たきり(〝乾燥〟させてくれと遺言に書いておく)

がんで、「余命」を告げられることは、何という安堵だろう。

 

次回更新は3月26日(水)、20時の予定です。

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