反射的に放った仙一の一言が、一夫の心の中のタエが対象の性衝動を、焦りと解決されないまま先を見通せない領域へと導いた。
一夫のそれが恋というのなら、仙一は未だ片想いの恋の相手すらいない。
仙一も、まだ女性を知らないし特定の女性を想った事もない。
仙一は、これまでまだ恋をした事がない。
これから先、どの様な相手が現れるのか分からない。
仙一は、いつか自分にも現れる、その相手を焦がれる様な恋に巡り会えるのか。それは、少なくとも相手がタバコ屋のおばさんでは無い。
若い自分が、これからどんな女性と関わり、どんな女と過ごし、どんな人生を送るのだろうか。
想いだけは、あてどもない先へと、まだ見ぬ恋の相手へと想いは巡る。
この先に、どんな出来事が自分に起こるのか。どんな女を相手に恋をするのか。
仙一にとってもまだ大人になったばかり。いや、大人に成ろうとしている今、女の事を考えても仙一には動物的な衝動しか思い浮かばない。男とはそういうものなのか。
仙一が自問自答しても、自分の思う恋とは性行為でしかない、今のところは。
仙一の脳裏に浮かぶのは、一夫とタバコ屋のおばさんがそのまま裸で絡み合う悩ましい構図であった。
夕食時、一夫に「仙一、お前は田舎に彼女が居るんけ」と言われるまではそんな事は考えてもみなかった事だったが、急に仙一の脳裏に今、まだ経験のない性行為を想像して自分がその主になった様な悩ましい蒼い性への渇望が頭をもたげてきた。