転落
転落というと高いところから落ちるというイメージがあるかもしれません。しかし脚立の一番上に立つとか、塀や木に登る、屋根の上で作業するなど、誰でも「危険かも」と思うことは専門家に頼もうとするので、まず自分ではやらないはずです。実際の転落はもっと身近なところに潜んでいます。
階段がもう終わりだと誤認して一段踏み外す、脚立の下から一〜二段のところから落ちる、ちょっと取るだけだからと回る椅子の上に乗ったら回ってしまい振り落とされてしまった、押し入れの天袋から冬服を取ろうとして積み上げた雑誌の上に乗ったら崩れてしまった……など、日常のほんのちょっとの油断から発生するのです。
猫だったら多少の落下は平気でしょうが、人間の膝や手首・足首の関節は私たちが思っているより遥かにもろい構造になっています。「まあこのくらいならできるかな」を疑いましょう。
普段しないこと、久々にすることはより慎重に
・普段運動していないのに、子供の運動会でいいところを見せようと、保護者リレーで張り切り過ぎて転倒
・子育てが終わって時間が取れるようになったから、若かりし頃に夢中になった登山に再挑戦しようと思ったら、意外と大変で下山中に捻挫
・庭の木を自分で切ってみようと思い立ち、ホームセンターで買ってきたノコギリでギコギコしていたら手首を痛めてしまった
・数年ぶりにジムに入会して、かつては余裕だった六十キロのバーベルを担いだら腰に激痛が走った
すべて実際にあった症例です。残念ながら私たちの身体能力は年々衰え、昔できたことが今もできるとは限りません。
ふと思い立って運動を始めるのはとてもいいことですが、かつてできたのと同じことやその少し手前から始めるのではなく、初心者程度から再開して徐々に強度を上げていきましょう。ジョギングなら早歩きから、登山ならハイキングから、水泳なら水中ウォーキングから。すぐに身体がやり方を思い出し、かつての輝きを取り戻せるはずです。