あの頃の憧憬

誰かさんの靴

ちいさい頃はいた おとなの靴

ぶかぶかで つま先があまって くすぐったい

でもなんだか 得意気なの

その靴じゃ うまく走れないでしょ と

またたく間に わたしの前から いなくなって

消えてしまう わたしの大好きな 誰かさんの靴

そして わたしの記憶からも あっという間に なくなって

すこし時がたって 同じことはできなくなったから

誰かさんは 相変わらず わたしの隣にいるけれど

もうわたしがはいても くすぐったくないの

ただちょうどよく わたしの足をおさめてくれて

それがなんだか悲しくて 涙ぐんだとき

誰かさんが あきれたように小さく笑って

その普通の笑い声に なぜだかほっとしてしまった

ネイルの魔法

赤いラメ入りのネイル

必死におねだりして 買ってもらった

わたしの わがままな ラメ入りのネイル

ふたをあけると お母さんの匂いがして

わたしは 唇をきゅっと結んだ

足の指先に そっと赤を落とすと

鮮やかな赤は ひんやりとわたしの足先を包む

てらてらと輝く わたしの背伸びした足先

を おそるおそる姿見に映す

胸が高鳴る一瞬

鏡の中にいた 10年後のわたしをおもはゆく見つめる

6歳のわたしは まだあどけない