【前回の記事を読む】「グループ研究、おもしろそうだからいっしょにやるけど、二つだけ条件があるんだ」と言われ「なに?」とたずねると…
第2章 夏休みの自由研究
2 悟のこと
ここで、考えがグループ研究のことにもどった。ヒスイについては、前から知っている。
とてもかたい、白地に青、緑、紫などの色がにじむ、とうめい感のある美しい石だ。
さっそく歴史の中のヒスイの役割について、調べはじめようと思った。
3 研一のこと
研一の父は、東京都内にある書店で働いている。大きなチェーン店の一つだ。彼(かれ)は店長としてそろえる本の種類や質にも、こだわりがあった。特に歴史関係の本が多く、めずらしい本がラジオでも紹介(しょうかい)されたことがあるそうだ。
書店は午前九時から、午後九時まで営業している。そのため、勤務時間は三部制になっている。早番は八時半から五時半まで、中番は十一時から午後八時まで、遅番は午後一時から午後十時までだ。
研一の父はほとんど遅番で、土・日はほとんど出勤している。休みがないわけではない。
平日に休みをとっている。お店で働く人たちの希望は早番と土・日の休みが多い。店長ともなると、どうしても従業員の希望を優先しなければいけないようだ。研一の母がそう教えてくれた。
だから研一は父と顔を合わせることが少ない。そのことと自分の性格が、関係しているのかどうかはわからないが、一人遊びが好きだ。
研一は父の書斎(しょさい)に入ることを禁じられていた。小さいころ、父の本棚(ほんだな)から本を抜(ぬ)いて落としては喜ぶので、それ以来、入室を禁じられたようである。もちろん研一は、そんなことを覚えていない。記憶(きおく)にある限り、入室が禁じられていた。
ところが夏休みのグループ研究のことを父に話すと、急に入室が許可された。条件付きだったが。条件は借り出しノートに、書名と借り出した日付を記入することだった。もちろん返した日付も。