【前回の記事を読む】「それでは研究の続編も、必ず見せてくださいね。楽しみにしてるわ」――その言葉を最後に青山先生は消えた

第3章 目覚めた勇士

1 青山先生の失踪(しっそう)

学級活動終了後(しゅうりょうご)、修司はすぐに校長室に向かった。ドアをノックした。

「どうぞ」

「失礼します」

「どうかしましたか? 藤山先生」

「青山先生は、なぜお見えにならなかったのですか?」

校長の顔がくもった。

「わからないんだよ。どうやっても連絡(れんらく)がとれないんだ。でも、退職に必要な書類は、すべて届けられ、手続き上はまったく問題なし。ただ本人の消息は不明」

これじゃ、子どもたちに説明できない。

五月の第一日曜日、ナンデモ研究会が開催(かいさい)された。当然、テーマは「青山先生のゆくえ」であったが、手がかりは何もなかった。

悟がため息をつきながら言った。

「青山先生はどこへ行っちゃったのかな? もう、会えないのかな? 青山先生に、研究の続編を読んでほしかったよな」

文子もうなずきながら、

「そうよね。青山先生に読んでほしくて、研究を続けてきたような気もするわ。縄文海人(じょうもんかいじん)の部族の一部が、丸木舟(まるきぶね)の材料確保と舟(ふね)の製造(せいぞう)のため、大きな川の源流地域(げんりゅうちいき)に移り住んだという仮説もたてたのに」

研一があとをつなげた。