「ヌナカワヒメとオオクニヌシノミコトの子どもタケミナカタと縄文海人(じょうもんかいじん)の部族の姫(ひめ)ヤサカトメノカミは夫婦で、二人は各地の諏訪神社(すわじんじゃ)にまつられている。このことは越(こし)の国(くに)と縄文海人(じょうもんかいじん)の強い結びつきを表しているのではないかという仮説もたてたよね」
悟がまた口を開いた。
「越(こし)の国は豊かな縄文(じょうもん)の文化を発展させたけれど、青銅器(せいどうき)や鉄器(てっき)の文化に追われ、ヒスイ加工技術者集団は散りぢりになった」
波奈は青山先生に自由研究を提出したときのことを思い出して、三人に話した。
「青山先生に自由研究を提出したとき、『ナンデモ研究会は解散したの?』って、聞かれたのよ」
文子が先をうながした。
「それで、なんて答えたの?」
「いいえ。これからも続ける予定ですって、答えたわ」
「そしたら?」
「そしたらね『それはいいことね。じゃ、この研究も続けることになるのね?』って、言われたの」
「それで?」
「はい、って、返事をしたわ」
「それで終わり?」
「いや、ちょっと待って、思い出したわ」
「えーとね……『それでは研究の続編も、必ず見せてくださいね。楽しみにしてるわ』だったわ」
悟が目を輝(かがや)かせた。
「それって、大きな手がかりじゃない? 一つは、必ずオレたちは、青山先生に、また会えるってこと」
いつも冷静な研一が、興奮ぎみに言った。
「もう一つは、ぼくたちの研究がひょっとしたら、青山先生が消えたことにつながっているかもしれないということ。どう?」
波奈は心の奥(おく)で、何かがカチッと鳴ったように感じた。
(そう、小さいころ不思議なことがいろいろとあったわ。それも、ひょうたん池公園が多かったような気がする)
「ねえ、みんな。六月の定例会はひょうたん池公園に行ってみない?」