最近のマヨネーズは卵から作られていないと聞いていた。卵は極めて高価で普段手に入らないからだ。卵黄の代わりに人工タンパク質や油脂を使っているのだろう。どうしても口に入れる気にはならない。けれども、それを皆に言うわけにもいかない。地上に降りた私たちを歓迎してくれているのだから。
「私、枝豆をもらうわ」
ベイクドポテト、白身魚のすり身のフライ、桜鱒のマリネ、サイコロステーキ、智子はメニューを確認した。ポテトとバターは北海道の農場のもの、桜鱒も長野の有名ブランドのもので、智子はそれらは口にした。
「智子さん、ポテサラはダメだけど、ベイクドポテトはいけるんだ」
ミナの何気なさを装った質問の底にある小さな意地の悪さを智子は嗅ぎ取った。
「うん、シンプルなほうが好きなんだ」
智子は適当に受け流しつつ、ミナをそっと見た。大きな瞳と艶やかな長い黒髪に、やや豊満なボディ。肌には張りがあり、何より若々しいエネルギーを発散している。
智子は自分にないものを明らかに感じたが、ただそれだけだった。孝太の好みには思えなかった。でも、やけに孝太と話し込んでいるのが気になった。
「智子さんは日本酒」
「うん」
「さすが」
〝さすが〞という響きの中にも智子は嫌味を感じたが、これも受け流すようにした。
「私は、ちびりちびり日本酒をいただいてるから、どうぞ、みんなはガンガン飲んでね」
スパイシーミックスピザとソーセージの盛り合わせが運ばれてきた。
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