「あれだけ喧嘩はだめって言ったでしょ。何があっても友達を傷つけることはだめ」

職員室を出てすぐに怒られる。反論しようとするけどかぶせるように「だってじゃない」と制された。

小学三年生になった僕の最近は友達との喧嘩ばかり。二年生まではそんなことはなかったのに最近皆が僕のことを無視する。昨日まで一緒にサッカーや鬼ごっこをしていたのに急に仲間外れにされたり急に後ろから叩かれたり。もちろん一緒に遊んだりする子もいるけど僕と仲良くしているとその子も叩かれたりする。

そういう時はこっちも無視すれば済むんだけど、なんかお母さんの悪口や昔の名字をからかわれて言われると顔が熱くなって自分が止められなくなっちゃうんだよな。目の前がその子だけになって気づいたら飛びかかっている。そしたら泣きながら言われるんだ。

「洋ちゃんにはお父さんがいなくて危ないからお母さんが遊んじゃだめって」

とか

「あの子の家は可哀想だから優しくしてあげなきゃだめだよっておばあちゃんに言われた」って。

僕は別に変でも可哀想でもないし。皆と同じくらい算数も国語も……ちょっと理科と鉄棒は苦手だけど、野球もサッカーもドッヂボールもできるし。これのどこが変なんだろう。お母さんの悪口をなんで言われるの? この事をお母さんに聞いたことがあるけど凄く困った顔をしたからそれからは絶対に言わないって決めている。

お母さんはいっぱいお仕事をしていて最近は夜ご飯を一緒に食べれるのは日曜日だけになっちゃった。キャッチボールも野球の練習もずっとできてない。でも僕がこうやって職員室で怒られると迎えに来てくれる。本当はだめなんだけどこれだとお母さんと一緒に帰れるから嬉しい。

「友達は大事だからね。仲良くするんだよ。それと自転車乗る時はヘルメット。あと宿題ちゃんとするんだよ」

 

本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

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