【前回の記事を読む】出征のときに持っていったのであろう、日の丸にたくさんの名前が書かれた布…遺品整理中に見つけて、手が止まった。

第二幕  やさしい魔王復活 

バスを降りると、原っぱの先に石垣が見え、その先には広い石段も見えていた。ところどころで歴史の説明を聞きながら、徐々に上へと登っていく。

落ち葉の上に、小さなヒキガエルの姿を見つけると、結迦はすかさず写真を撮った。まさか、秀吉さんじゃないよね。内心そんな想いを感じた結迦は、ほんの少しの間、ヒキガエルの姿を追っていた。

ついついマイペースな結迦は、他のツアー参加者との間が離れがちで、遅れて後を追いかける、そんな光景が多かったかもしれない。

標高が少しずつ高くなるにつれて、見下ろす景色は広がってくる。太陽の光も柔らかなビームとなって、地面に降り注いでいた。真っすぐに降りてくる光はまるで、葉っぱの一枚一枚を映し出すかのように、煌(きらめ)いて見えるのだった。

なんて美しいんだろう。結迦はひとりで喜んでいた。ゆっくりと深呼吸をしながら、山の空気感に安堵していたようである。山の頂上らしきところには、本丸跡という石碑があった。天主閣址や信長公の木廊(きろう)の石碑も写真に収めた。

初めて見渡す琵琶湖はとても穏やかで、夕陽が落ちる前のきらきらと光る湖面を、かつての賑わいを重ねるように、結迦は見つめるのだった。茜色(あかねいろ)に染まったモミジの木々と真っ黄色に色づいて落ち葉となったイチョウの葉っぱも、太陽の光を浴びていて、参加者の目を楽しませてくれた。