はじめに

この度は本書をお手に取ってくださり、ありがとうございます。

世の中には、不思議な体験をされる方が少なからずいらっしゃることと思いますが、どうしたわけか、私もその中のひとりになってしまったようなのです。

霊とかが見える、というわけではありません。けれどもまさか、こんなことってあるの……? 的な信じがたい出来事から、「多次元に生きる」を体験中のようです。

夢なのか、妄想なのか、本当に現実なのか、時間を超えてしまっているのかさえもあやふやな感覚で。でも、体験しているのは私でした。

そんなわけで、こちらの物語は、ある戦国武将との共著といっても過言ではありません。どうぞ最後まで、このフィクションをお楽しみいただけましたら幸いに存じます。

主な登場人物

信長公:歴史上の人物

結 迦:見えない世界が好きな女子

プロローグ

今からざっと五百年ほど前、教科書的な日本史の情報によれば、時代は室町時代後期(戦国時代)から安土桃山時代とされている。

戦国時代を代表する武将といえば、織田信長公の名を覚えている方は多いと思う。尾張の国(現、愛知県)で生まれ、13歳で元服。桶狭間の戦いで今川義元に勝利。この出陣前に『敦盛』を舞い、若い家臣を鼓舞したともいわれている信長公。

そして、大うつけ、天下人、第六天魔王、天下布武、比叡山焼き討ち等、凄みのある言葉が多く見受けられるが、幼き頃より武士としての感性を磨いたり、馬術をはじめ鍛錬にも相当実直だったようだという、武将の名に恥じない生き方もされてきたこともうかがえる。

琵琶湖の傍らに安土城築城後、全国の大名らによる侵攻から、万能寺*1で重臣明智光秀に襲撃され、49歳で生涯を終えることとなった。

信長公の遺志はその後、豊臣秀吉や徳川家康に受け継がれ、江戸時代へと歴史は続く。万能寺の変で信長公は自害したということだが、遺体が見つかっておらず、多くの謎を残したままとなっているようだ。

信長公は本当に、万能寺にいたのだろうか……。影武者の可能性はなかったのだろうか。たくさんの憶測がなされる中、真実は、信長公自身だけが知っているのかもしれない。