【前回の記事を読む】「“みずいろ”学級の先生からお話がありました」と話し始める担任。小学校6年生の秋…思い出すと、酔いが引いていった

二、三人の子に女の先生が一人。その女の先生が子どもたちの腰や尻を横から抱えて逆上がりの補助をしている。その子らは誰も逆上がりができなくて、鉄棒にぶら下がっているだけで精いっぱいだった。

女の先生が「よいしょ」とか「それっ」とか声をかけてタイミングをとっても、その子たちはドタッ、ドタッと床に足を投げ出してしまう。その光景を見ながら遊び仲間が言った。

「もう、あの鉄棒に触らんでおこうや。あいつらの掴んだところ、気持ち悪い」他の仲間たちも口元をゆがめて頷き、同調した。

夏生は瞬時に思った。

それは、違うだろう。

それは、何か違うだろ。

何がどう違うのか、その時言葉にはならなかったが、唾を吐きたくなる嫌悪を感じた。

その嫌悪感が今また蘇ったのだった。

青木先生が続ける。

「みんなは『みずいろ』の子たちとほとんど関わりを持ったことがないと思います。だから、あの子たちがどんな子なのか分からない。でも、『みずいろ』の子たちの活動を見たり、彼らのことを人から聞いたりして、あの子たちは自分たちとは遅れている、一年生の子たちが分かることも分からない、そう思っている人もこのクラスにいるかもしれないですね」

青木先生は唾を飲み込んで、こちらに目を向けているクラスの子たちを見た。