二.噂

僕の生まれ育った町は、所謂〝地方都市〟というところに属してはいた。しかし、東京や大阪などのど真ん中の都会と比べたら、全く〝都会〟とは言い難い。

しかも、その地方都市の表玄関になるような駅近郊ならともかく、その駅から電車を乗り継ぎ、およそ一時間弱くらいの場所に位置している。冬ともなれば雪化粧となり、交通も不便になる。まぁ、夏はそれなりには過ごしやすいかもしれないが。

一応、電車やバスなどの公共の乗り物は通っている。一本だけ地下鉄も乗り入れている。全国的に有名なデパートなどはないものの、地方では有名なデパートが一軒と、それなりの大きな商店街や娯楽施設などはあるので、生活に困るほどの田舎というわけではない ……にしても、やはり〝都会〟とは、かなり言い難い場所ではある。

そのような場所に、この時期、彼女のような美貌の持ち主が東京からやってきたとなれば、町のど真ん中に、突然、季節外れの大輪の花が咲いたようなものだ。小さな町の噂にならないわけがない。

自分の親でさえ、彼女が転校してきてから一週間も経たないうちに妙なことを言っていたくらいだ。

    

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