第1章 「細くて長い形の文化」は直立二足歩行から始まった
Ⅰ 人類は生き残るために直立二足歩行と体毛喪失の道を選んだ
◆ひ弱な初期の人類は過酷な環境をどのようにして生き延びたのだろうか
初期の人類の主食
草原に進出した初期の人類が生き延びるために多大な苦労をしいられたことは容易に想像できる。人類は長い年月、木の実や根菜などの採取や狩猟で食糧を確保していた。火を使うことができるようになって、獣肉を火で温めると硬くなり美味しく食べやすくなった。
しかし、狩りは必ずしも毎回成功するとは限らず、食糧をコンスタントに得ることは困難をきわめたであろう。
約三〇万年から数万年前にかけて、ネアンデルタール人がヨーロッパ全域で生存していた。ネアンデルタール人の遺跡はヨーロッパ中で広く見つかっている。そのいくつかの遺跡で、動物の骨が多く出土している。割られた骨も見つかっている。長骨を割って骨髄を取り出し、食していたと推測されている。
ここで注目すべき報告がある。霊長類を研究する島泰三氏は、動物の骨の栄養価が動物の肉のそれとほとんど遜色ないことに注目した。さらに、人間の硬度の高いエナメル質の歯と平らな歯列で、十分に獣骨をすり潰せることを自ら試した。