草原に進出したひ弱な人類は、狩猟動物が見向きもしない骨格の残っている動物の死骸を、草原で容易に且つ継続的に見つけることができた。人類は、人類にしか享受できない宝物を草原で見つけたのである。
先人たちは石器を使って死骸から骨格の関節を砕き、骨を取り出した。さらに、石器を使って骨を砕き、口に入りやすい大きさの骨を手に入れることができた。これらの考察から、骨そのものと骨に包み込まれた骨髄が人間の主食の資格を持っていたと島氏は指摘している。
ボーン・ハンティング(骨猟)によって、単に骨について残っている死肉を求めるのではなくて、人類は骨そのものを求め主食としたのである。
骨髄を食する料理は、現在でも広く普及している。私は以前、ローマのテルミ駅近くのレストランで、オッソブーコ(穴のあいた骨を意味するイタリア語)の料理を食したことがある。仔牛の脛肉を骨付きのまま輪切りにして、トマトソースと一緒に煮込んだものであった。骨髄が溶けてまろみを持った酸味のある食感を今でも鮮明に覚えている。
草原を生活圏にしていた動物の獣骨は、人類が生き延びるための大切な役割を果たしたのである。古代の人々が生活する住居内には、「細くて長い形」をした骨が数多く転がっていたのではないだろうか。
また、川岸や海岸の近くにいた人類は魚や貝類なども食しただろう。他の狩猟動物に比べて、ひ弱な人間が生き抜くために、それぞれの地域で持続的に得られる食料を主食として受け入るように進化をとげていったのである。