電車の走る場所

ホームのベンチで頭を抱える原田に、吉村はニコリと笑って言った。

「福井くんはきみを追って来ているよ。こんなところでグズグズしていていいのかなぁ」

笑顔の吉村がスマホの画面から消えると、駅のアナウンスが入ってきた。

「まもなく、2番線に電車が到着いたします」

この声を聞いて原田はベンチから立ち上がり駅の改札を出た。駅を出ると、まだ夕方になる前の明るい陽があった。どこに行けばいいのかわからなかったが、とにかく一旦駅から遠のいた方がいいと思った原田は、足を前に踏み出した。

街の中心から離れた人通りの少ない道、車が通る広い道、知らない道をやみくもに歩き、自分がどの辺りにいるのかわからなくなり、地図で確認しようとスマホに手をやったが、スマホを開くことが恐ろしく感じ、道がわからないまま歩き続け、いつしか原田は路地に入っていった。

(もう、どこへ……どこまで逃げればいいのか……わからない……)

駅からどのくらい離れたのか、原田が額の汗をぬぐうと、前から歩いて来る人影を見た。見覚えのある大きな体が近づいてくるのを見て、原田は少しずつ後ずさった。

前から来る男は福井だったのだ。蛙が蛇に睨まれたかのように体が硬直してしまった原田は、後ずさることが精一杯だった。そんな彼に福井が声をかけた。

「よう原田。ひさしぶり」

ひさしぶり……と言葉を返すくらいの余裕もない原田は、渇いた声で福井に言った。

「なんで、ここにいるの? なんで、ここがわかった?」

怯えた目をする原田に、福井は自分のスマホを見せて言った。